最近は、交通事故ではなく、家庭内でのちょっとしたトラブルで骨折する子が増えています。
それが、成犬時の体重が2kg以下の「超小型犬」で、日本国内で人気犬種であるチワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャテリアなどで該当する子がいます。この子たちの骨折治療を行うには、従来の古典的プレートでは非常に困難であり、残念ながら癒合不全となり治らない子もいる現状です。

当院では超小型犬(2kg以下)の橈骨・尺骨骨折の治療のためLCP1.5mm(Locking Compression Plate)(SYNTHES社製)とMATRIX(SYNTHES社製)を導入しました。
超小型犬の骨折の治療を行う場合には、適切な治療法の選択やインプラントの選択が非常に重要と考えられます。一般に骨折治療では骨径に対して30%程度のスクリューホール径が望ましいと考えられ、超小型犬の場合では骨径が5-6mmの症例も多く存在し、1.5mmのスクリュー、そのスクリューに適したプレートの選択が必要です。

当院ではSYNTHES社製1.5mm LCP(Locking Compression Plate System)を導入しより安全で正確な骨折治療を実現します。
少し、大きめの子にはMATRIX(SYNTHES社製)を使用しております。

Locking Compression Plate

LCP1.5を使用して整復した、トイプードルの橈尺骨骨折の治療例

LCP1.5を使用して整復した、トイプードルの橈尺骨骨折の治療例LCP1.5を使用して整復した、トイプードルの橈尺骨骨折の治療例

ここから先は、少しマニアックな?説明になりますが、興味のある方はご覧ください。

ロッキングプレートとは

従来の古典的プレート法では、スクリュー(ネジ)でプレートを骨に押し付ける事で固定力を獲得していました。その為、骨を強く圧迫する事で骨膜の血流を阻害し骨折端の細胞が壊死するなど、治癒機転に悪影響を与えるリスクがありました。
近年の獣医療における骨折治療では、LCPを含めたロッキングプレートの出現によって大きな変革を迎えつつあります。
ロッキングプレートは形状が既存のプレートと似ているため、プレートの延長上にあると思われがちですが
ロッキングプレートはプレートとスクリューをロックする事によるAngle stability(骨の角度安定性)によって固定するもので、これまでの古典的プレート固定がプレートをスクリューによって骨に圧着しプレートと骨との間の静止摩擦力によって固定していたのとは全く固定の理論が異なります。
固定の理論は既存のプレートより創外固定に近く,創外固定に対して創内固定ともいうべき固定具です。
本体が体内にあるので、骨と本体との距離が近くピン(スクリュー)が皮膚を貫通していないという特徴があり、力学的観点からも感染予防の観点からも、オーナー様のコンプライアンスの観点からも創外固定より有利です。
簡潔に表現すると、従来のプレート法は「完璧な固定(骨を融かすリスクがある程に)」を重視しているのに比べ、ロッキングプレートでは生物学的癒合を優先した骨折治療となっており、従来の骨折治療のトラブルの多くを解決できる方法と考えております。

LCP1.5とは

SYNTHES社製1.5mm LCP(Locking Compression Plate System)のことで、主に極小犬の橈尺骨骨折に対して使用します。チタン製のプレートです。

Locking Compression Plate SystemLCP(Locking Compression Plate
ロッキング6

MATRIXとは

もともとは、ヒトの顎用チタンプレートですが、小動物の骨折治療に最適のプレートシステムです。
各サイズのスクリューのプレートを自由に組み合わせることが可能で、症例に合わせて最適なバランスで選択ができます。さらに、ロッキングスクリューの欠点であった、スクリュー挿入角度がプレートに対して垂直にしか挿入できないことも解決され、10~15度の角度をつけたスクリュー挿入が可能です。
体重2kg~20kgの動物(犬・猫)に使用可能で、橈尺骨骨折だけでなく、大腿骨や上腕骨など様々な部位に応用が可能です。

MATRIXMATRIX

猫の大腿骨粉砕骨折の治療例

Matrix2.0mm厚のプレートを使用。ロッキングスクリュー径は2.4mm。
他、ラグスクリューと、チタンワイヤーも使用して整復。

術前

猫の大腿骨粉砕骨折の治療例 術前猫の大腿骨粉砕骨折の治療例 術前

術後

猫の大腿骨粉砕骨折の治療例 術後猫の大腿骨粉砕骨折の治療例 術後

おわりに

最近の主流の人気犬種は概して、小型犬や超小型犬です。ソファーや抱っこからの落下などによって骨折が認められる事が多くなっています。ギプスで治す事はほぼ不可能で、また手術による治療も比較的高難度となっています。
その理由として、骨自体が薄くもろく小さい為、高い固定力を得る事ができる大きなネジや長いプレートなどを使う事が出来ないからです。ですが、今回のロッキングプレートでは小さなプレート、小さなスクリューで十分な固定力を得る事ができるので、飼い主様に大きなメリットとなると考えております。
とはいえ、「骨折をしない飼い方」が最も重要です。トイプードルの「トイ」は、トイザラスの「トイ」です。おもちゃ以上に繊細なワンコですので、細心の注意で飼う必要がありますね。

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