*手術写真があります。ご気分を害される方もいらっしゃいますので、ご注意下さい。

当院では、犬の膝蓋骨脱臼の治療に積極的に取り組んでおり、数多くの症例で手術経験があります。
また近隣の先生方からの手術依頼も受け入れております。
犬の膝蓋骨(パテラ)脱臼は、トイプードルやヨークシャーテリア、チワワなど小型犬中心の日本では最も多い整形外科疾患と言っても過言ありません。
小型犬だけではなく、最近では柴犬の跛行(歩様異常)の原因としても多い疾患です。

膝蓋骨脱臼は、その程度によって病気のグレード(進行状態)が分けられ、グレード1から4まで分類されています(1が軽症で、4が最も重症)。グレード4は先天的に異常を呈している可能性があり、1歳齢までの比較的若齢期で症状があって受診されるケースがほとんどです。グレード2~3の犬では、意外と無症状なケースも多く、見過ごされやすい状態です。近年では、トイプードルに膝蓋骨動揺症という内側外側の両方に緩みがある、難治性のケースも多くみとめられます。

手術の適応の判断は難しいのですが、手術が必要なケースなのに放置してしまった場合には、全てではありませんが、晩年(中高齢)になってから、跛行(歩様の異常)を呈して生活が不自由になることがあります。

当院では様々なグレードに対応した手術を実施しております。
手術の適応か否か、どのような手術方法で治療を行うのか、診察時に説明をさせて頂きます。

手術方法の実際

膝蓋骨脱臼(特に内方脱臼)の手術は、1つの手術法で治すことはできません。この疾患は、様々なグレードと多様な病態を呈しているため、外科医は多種多様な治療技術をテーラーメイド的に駆使して手術を行います。
以下に各手術手技の詳細を記載させて頂きます。

  1. 滑車溝形成術(造溝術)

    膝蓋骨内方脱臼を呈している症例のほとんどで行う手技です。滑車溝というのは、膝蓋骨の受け皿となると大腿骨遠位のくぼみです。この溝が浅いと膝蓋骨が脱臼しやすくなります。
    当院では「ブロック・リセッション」という方法で、ブロック状に関節軟骨を切り出し、溝を深くした後にそれを戻す方法を採用しています。これによって増深した大腿骨滑車は、膝蓋骨を深く受け入れて再脱臼をしにくくなります。

    造溝前
    造溝前
    造溝後
    造溝後
  2. 脛骨粗面転移術

    グレードの高い膝蓋骨内方脱臼では、膝蓋骨を中心としたアライメント(正常な並び)が異常であるケースがみとめられます。具体的には、大腿四頭筋~膝蓋骨~膝蓋靭帯の位置が直線上でないと、脱臼を起こしやすくなります。このアライメントを調整するために、脛骨粗面(足のすね)をボーンソーで骨切りして位置を正常に近い部位に移動させ、ピンといわれる金属で固定します(2ヵ月で抜去します)。

    脛骨粗面の骨切り
    脛骨粗面の骨切り
    転移後にピンで固定
    転移後にピンで固定
  3. 筋および支帯の矯正

    これは飼い主様へ説明するのが最も難しい手技ですが、最も重要な手技でもあります。膝蓋骨が位置および機能的に正常であるためには、大腿四頭筋と関節周囲の靭帯、関節包が必要であり、適度な緊張と弛緩があるおかげで、それらが膝蓋骨を中心とした伸展ユニットして機能します。
    したがって、この伸展ユニットでバランスが悪い部位があれば、それを解放(リリース)したり縫い縮めたり(縫縮術)する必要があります。
    具体的には、縫工筋前部解放術、内側広筋解放術、内側支帯解放術、外側支帯縫縮術などを組み合わせます。

    縫工筋(前部)解放術
    縫工筋(前部)解放術
    内側広筋解放術
    内側広筋解放術
  4. 脛骨内旋制御術(Flo法 / LSS:Lateral Suture Stabilization)

    これも難しい手技ですが、本来は前十字靭帯断裂の手術として用いられる手技で、強度の強い糸(セキュロス社製ナイロンやエチボンド)を腓腹筋種子骨と脛骨の骨孔に通し関節の外から固定することで、膝関節の不安定を無くす方法です。膝蓋骨内方脱臼の症例では、外側側副靭帯の緩みによって、内反膝と脛骨内旋が生じているケースがあります。このケースでは脛骨粗面転移術ではなくLSSというこの手技を行い、脛骨の内旋を制御することで、膝蓋骨の内方脱臼を防ぎます。

    脛骨内旋制御術
    脛骨内旋制御術

*以上、上記の手技を組み合わせて、最も適切な状態になるように手術を行います。

飼い主様へ

犬の膝蓋骨内方脱臼は、とても多くみられる病気ですが、治療法には様々な考え方と方法があります。
当院が考える治療がベストであると断言はできませんが、安易に保存治療(手術を選択しない内科治療)を選択した子が高齢になり、重度の跛行(歩様の異常)を呈して来院されても、すでに手術が手遅れなケースを診ることがあります。 手術をするにせよ、しないにせよ、現状と将来をしっかり考えた上で、治療法を選択してあげたいですね。難しい病気ですが、当院では分かりやすく、時間をかけてインフォームドコンセントを行います。この病気で悩んでいる方は、どうぞお気軽にご相談下さい。

ご紹介頂ける先生方へ

当院では、犬の膝蓋骨脱臼(内・外)、膝蓋骨動揺症の手術依頼を受けさせて頂いております。
グレードは2~4まで、どのグレードでも問題ありません。ただし、グレード2の症例では、基本的には臨床症状があるケースをお受けしております。また、重症例で大腿骨や脛骨の矯正骨切り術が必要となるケースでは、お受けできない場合があります。一度、診察をさせて頂き、手術の適応か否かをご相談させて下さい。メールやお電話で結構ですので、お気軽にご紹介下さい。

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