イラスト生活環境の向上や獣医療の発展と共に、ペットの寿命はとても長くなりました。それとともに、特に最近問題となってきているのは「歯の病気」です。ご自分のワンちゃんやネコちゃんの口臭が気になったことはありませんか?  歯を含めた口腔内の病気が進行すると、顔が腫れてきたり、ご飯を食べられなくなったり、様々な病気の原因となったりします。

当院では、歯科検診と歯科処置に力を入れています。

歯科検診って?

まずは飼い主様がご自分のワンちゃんやネコちゃんの口の中を見て頂くことから始まります!発見しやすい異常は、「歯石」で、歯に付着するいかにも汚らしい混濁色の石です。また、歯だけではなく歯肉(歯ぐき)の赤みにも注目して下さい!歯周病の大事な所見でもあります。

「怖くて口の中を覗けません」という方は、まず口臭をチェックしてください。「臭い!!」と思ったら病院にご相談下さい。その他、頬(ほっぺた)や目の下の腫れ、口の痛みや食欲の低下も歯のトラブルが原因である可能性があります。

こういった異常があれば、是非当院へご相談ください。現状と治療法についてご説明させて頂きます。

重度の歯石が付着した犬
重度の歯石が付着した犬
歯周病で口が痛い猫
歯周病で口が痛い猫

歯科処置の前に

イラスト歯科処置を受けるにあたって、最も重要なのは「ペットの体調」です。理由は、歯科処置には必ず全身麻酔が必要だからです。全身麻酔・・と聞くと尻込みしてしまうかも知れませんが、体調さえ問題なければ麻酔は非常に安心です。また、麻酔は処置の際の痛みを軽減し、大切なパートナーにストレスをかけません。正確で丁寧な処置をするために、麻酔は重要なのです。麻酔を安全に実施するために必要なのが麻酔前の検診です。具体的には、触診や聴診を基本として血液検査まで実施する場合があります。その結果次第では、残念ながら歯科処置をお薦めできない場合もありますが、検診で循環器や腎臓・肝臓といった麻酔の際に重要な臓器に異常がなければ、安心して麻酔を実施できます。

歯科処置について

一言に歯科処置といっても、様々な処置があります。以下に代表的な処置をご説明します。

歯石除去(スケーリング)

スケーリングとは、歯の表面から歯垢・歯石などの付着物を除去することです。当院では「超音波スケーラー」を用いて歯石の除去を行います。目に見える歯の表面だけでなく、目に見えない歯周ポケット内の歯垢・歯石も除去していきます。処置が終わったら、歯の表面を研磨し(ポリッシング)、口腔内をよく洗浄いたします。

抜歯

文字通り歯を抜くことです。これは、飼い主様から非常にご理解いただくのが大変なのですが、残念ながら必要な場合があります。当院では、高速バーを用いた分割抜歯を行っており、抜歯後の形成外科にも力を入れています。

どんな場合に歯を抜くの?
最も多いのが、歯周病によって動揺歯(グラグラした歯)になっている場合です。すでに歯肉(歯ぐき)が後退して歯の根元(歯根)が露出している場合には、残念ながら歯を温存することが不可能な場合があります。逆に歯を残してしまうことで、歯周病の進行を防げなかったり、細菌の汚染が進行する場合があります。また、「根尖膿瘍」といって、歯根(歯の根元)で細菌感染があり、歯の表面がたとえキレイでも、この根尖の病気によって歯ぐきから膿が出てきたり、鼻血やいびきが生じたり、目の下や頬が腫れて膿が出てきる場合があります。この病気は「ミニチュア・ダックスフント」にとても多い病気です。この場合には、原因となっている歯を抜き、丁寧にその部位を洗浄する必要があります。他にも、乳歯が残ってしまった場合(乳歯遺存)も、抜歯の対象となります(これはチワワなどの小型犬にとても多くみられます)。

犬歯の根尖膿瘍から歯肉に瘻孔ができた症例
犬歯の根尖膿瘍から歯肉に瘻孔ができた症例
歯を抜いても食べられるの?
これはよく頂くご質問です。答えは「大丈夫」です。基本的には、犬と猫は「丸呑み(まるのみ)」する動物で、人間のように食べ物を磨り潰す本来の臼歯は存在しません。実は噛み合わさっている歯は少ないのです!したがって、多少の不都合があっても、ごはんを食べることに不安はありません。極端な話ですが、1本も歯がなかったとしても食べられます(笑)。ただし、歯がなくなることで、舌が出やすくなる場合がありますので、その際にはご説明をさせて頂きます。無駄な抜歯をすることはありませんので、ご安心ください。
歯を抜いた場所はどうするの?
基本的に、抜いた部位に重要な問題がなければ、肉芽というものが形成され、徐々に欠損した部位が埋められて治ります。しかし、抜いた穴がそのままでは、不快感が生じたり、二次的に感染が生じて悪化する場合もあります。当院では、積極的に口腔外科を行っており、「フラップ形成」といって、抜歯した部位を粘膜で覆うように手術いたします。縫合する糸は非常に細い糸で、徐々に溶けていく吸収糸を使用しますので、不快感もなく抜糸の必要性もありません。
高度な歯科医療について
残念ながら、当院で実施できない高度な歯科医療があります。具体的には、折れた歯(破折歯)を治すための歯内治療(根管治療)・歯冠治療(クラウンやコンポジット)、他には歯科矯正、大規模な顎骨切除です。このような治療は「口腔外科専門医」による治療が推奨されます。当院では、ご希望の飼い主様には実施可能な施設にご紹介させて頂きます。

最後に

麻酔に対する過度の不安から、歯科処置を受けて頂いてないワンちゃんを多くお見受けします。食べたいのに痛くて食べられず、痛み止めだけで頑張っている猫ちゃんを見るたびに心が痛くなります。歯科処置にあたっての不安な点や費用に関しても、ご理解いただけるまで精一杯ご説明させて頂きますので、どうぞあきらめずにご相談下さい。

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